さよなら高校野球 -最終話-

よくぞここまで粘った。そして打席にはチームの主砲。彼が打てなかったのならもうそれは仕方がない。もう僕は「チームの必死の粘りで最高の場面を作ってくれて、結果がどうなっても悔いはない」という気持ちになっていた。いや、そういう気持ちにさせてもらえた。

スタンドの大声援の中、大声援はなぜか遠くに聞こえ、自分の声は頼りないものになっていた。僕の意識は、集中しすぎるくらいこの場面に集中していた。そして、ただひたすら祈り、祈り、祈り続けた。

2球目、金属バットの音が響いた。僕は一瞬打球を見失ったが、センターの動きで打球の方向がわかった。

センターは左中間方向に下がり、そしてこちら向きになって打球を見上げている。

その瞬間――目をそむけたくなる現実を受け入れなくてはならない時――その時がきたと悟った。

そして、スローモーションのように打球がセンターのグラブに吸い込まれた。

それと同時に僕の全身の力が足元から抜け出ていってしまった。

チームの夏が、二男の高校野球が、そして我が家の野球道が、とうとう幕を閉じてしまった。試合終了のサイレンが野球との別れを無感情に告げた。

チームが敗退した後も世間では高校野球は続いているが、今まで足元で繰り広げられていた熱戦が、少し遠くに行ってしまった、そんな気がした。これから高校野球というものは、徐々に徐々に僕から距離を置こうとするのだろうか。

思えば、兄が小学一年生で少年野球の球拾いをしたことがきっかけで野球を始め、その彼はのちに少年野球のキャプテンになり、中学野球では市の選抜チームに選ばれ、そして高校球児となった。

弟も兄の後を追うように少年野球のキャプテンとなり、中学野球でも市の選抜チームに選ばれ、高校球児となり、そして兄の果たせなかったベンチ入りメンバーをつかみ取り、兄のリベンジをしてくれた。

少年野球時代、親の休日はすべて少年野球の手伝いにとられ、なんてブラックな世界に首を突っ込んでしまったんだ、なんて思ったこともあった。

しかし、もう一度タイムマシーンに乗って子供達の小学校時代に戻ったとしたら、子供達の少年野球に反対はしないだろう。

だって、子供達の野球を精一杯応援し、一緒に泣き、一緒に笑った日々は、僕達家族にとって、かけがえのない宝物になったんだもの。

楽しいことよりも辛いことの方が10倍多い、そんな野球の道だったけど、その苦労が、その努力が、彼らの自信となり、この先の人生のいろんな場面で彼らの行く道を照らしてくれるだろう。

そして、僕達両親も、子供達の青春に片足を突っ込んで、第二の青春を楽しむことができた。

太陽が地平線に沈むように、物事には必ず終わりが訪れる。その宿命に手を引かれ、長い長い、我が家の野球の道もついに終わりの時を迎えた。息子はバットを、僕達両親は応援メガホンを、そっと置く時がやってきたのだ。

スタンドで、打席に立つ息子をハラハラドキドキ見守る・・・あの緊張感を味わうことはもう二度とないだろう。でも大丈夫、目をつぶれば、いつだって長男や二男の雄姿がよみがえる。一生忘れはしないよ。

そして、彼らがバットを置いた時に僕が贈ったメッセージ・・・それはこうだ。

「君は父と母にとってのスーパーヒーローでした。夢と感動をありがとう。」

ありがとう、高校野球 ! さよなら、高校野球 !

<このシリーズおしまい>

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しばらくブログはお休みする予定だったのですが、心に残る出来事だったのでシリーズとして書かせていただくことにしました。
ワンコブログの本題からは外れる内容でしたが、最後までお付き合いいただいた方がいらしたら嬉しく思います。
ありがとうございました。

別の創作活動に入っているため、ブログは少しお休みします。
9月頃再開予定です。

Tag:Essay  Trackback:0 comment:0 

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ライムぱぱ

Author:ライムぱぱ
ライム:2008年6月3日生まれのイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル(♀)

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愛犬ライムとのスプな生活のエッセイをつづったり、4コマ漫画的なコミックを描いたりしています。 イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの性格や特徴、グッズなどもご紹介しております。 なお、当ブログはリンクフリーです。リンクしていただいた場合、こちらもリンクしますので、コメント欄からお知らせください。
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